カニエ・ウェストがトランプを支持しているとライブ中に表明。増加するヘイト犯罪…

Writer: 渡邉航光(Kaz Skellington)


 

米大統領選挙が終わり、1週間半経った。トランプ当選は世間を騒がせ、特にヒップホップ業界からの反応は大きかった。

トランプ当選を悲観的に見るアーティストがいるなか、Kanye West(カニエ・ウェスト)だけは違った。以前本人は投票していないとコメントをしていたが、本日行われたライブのMCでトランプ支持を表明した。カニエ・ウェストはステージ上でこう語った。

黒人たちに向けて言いたいのは人種差別にフォーカスしすぎるのは、やめようということだ。この国は差別的な国でそれは事実だ。人種差別にフォーカスしすぎて、エネルギーを使うのはやめよう。ハリウッドもラジオでも人種差別がある国だ。そういうことを話すんじゃなくて自分たちが好きな話題を話そう。どちらかの大統領候補者がすぐにそれを変えるなんてできやしないんだ。

俺が投票しなかったという話しは前にしたと思うが、もし投票するとしたらトランプに入れていただろう。

このようなMCをしたカニエ・ウェストだが、観客からはブーイングと歓声が入り混じっているようだった。MCの前半部分ではそこまでの反響はなかったが、トランプを支持していると言った瞬間に観客はヒートアップした。このMCをした後に客からペットボトルを投げつけられ、彼は「何?俺は自分の意見も言っちゃ駄目なのか?」と返答した。

このように自分と違う意見だからといって、ペットボトル投げつけるような、考えの多様性を認められない気持ちが差別へと繋がるのではないかと少し思ってしまうが、今回の表明はそれほどショックだったようだ。アメリカのツイッターユーザーのツイートを読んでいても、ショックを受けている人が多くいるようだ。しかしカニエが言わんとすることはわからなくもない。前半の「人種差別にフォーカスしすぎて、エネルギーを使うのはやめよう」や「どちらかの大統領候補者がすぐにそれを変えるなんてできやしないんだ」という箇所は全体的にプラスに取れるだろう。

増加するヘイト犯罪

ではトランプを支持することに関してどうだろうか?当選後、トランプのマニフェストは当初から変更された部分が多く、選挙中ほど悪い内容となっていない。しかし本当の問題は彼の発言に感化された過激なサポーターであろう。トランプの当選後、6日間で多人種やムスリムに対して行われたヘイト犯罪が2015年の通算よりも多く、437件もあったのだ。このような状況で人種差別を話題にするな、と言われて怒りを露わにする人が出てくるのも当然だ。さらにトランプが火付け役となったのも事実である。トランプはそのような行為を止めるように、と発言しているが、燃えうつった負の感情がそう簡単に消え去ることはないであろう。そのような火付け役としての意味でもトランプを憎んでいる人が多いのも事実だ。

今後アメリカの政治とヒップホップがどうなるかが、しばらくの注目ポイントとなるであろう。特に人種やヘイト犯罪が多発する中、ヒップホップアーティストがどのようなメッセージを伝えるかは、全員の注目の的だ。そのような歴史的事実の上で成長してきたジャンルとして、ここが真価を発揮する一つのタイミングとなるであろう。

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