Staff Blog:カナダの音楽シーンをDigる〜スケボーとバンド編〜
Writer: Akashi Yoshida
白人のストリートカルチャーとしてのスケートボード
ブラックミュージックの歴史の中でも比較的新しく勃興したジャンルであるヒップホップもその誕生から優に40年以上経過した現在。今も尚 若者のストリートカルチャーを象徴するヒップホップではあるが、ストリートカルチャーの象徴としてヒップホップと双璧を成すと言っても過言ではないもう一つの存在を読者諸氏はご存知だろうか。
タイトルに一目通した方であればこの問いに対する答えは明々白々であることは間違いないだろう。そう、スケートボードである。
共にストリートというキーワードが強く文化の中核に結びつき、ファッション的にも少なからずの近似性が見られ、かつ若者に愛され社会からは少なからずの批判を浴びるなど幾つかの面において共通項が見出せる両文化ではあるが、この二つの文化の関連性はあまり語られることがなかったように思われる。
事実としてこの二つの文化は生まれた時代、また生まれた土地(ヒップホップは東海岸、スケボーは西海岸)などといった違いがある。加えてヒップホップは黒人主導で生まれた文化であるのに対して、スケボーは白人主導にて生まれた文化であるという点もまた見逃してはならない事実であると言える。
若者のインスピレーションを牽引する二つの文化
ブラックカルチャーとは異なる出自点よりスケボー文化は発祥したという前提知識のようなものを共有した上で、今回の主題となるカナダにおけるスケボー文化と音楽文化の交わりについて述べて行きたい。
突然ではあるが筆者が今年の春から夏の終わりまで訪れていたカナダにて出会った上記の映像をチラリと見ていただきたい。全編英語のドキュメンタリーである上にかなりの長さの映像であることから多くの人にとってはまるでどういった内容を扱う映像であるかわからないかと思われるので簡単に概要を紹介していく。
➖ PM Skateboardsの代表を当時勤めていたイアン・コミシンが自社の宣伝も兼ねてルームメイト達ととあるツアーを開催する。ツアーの名前は”Hicks on Sticks”。後のプロスケートボーダーであるジョッシュ・エヴィン、ケルト民族的なアプローチとパンク、ファンクなどをブレンドした音楽が特徴的なバンド”The Honeymans”、ハードコアパンクバンド“side 67”などを引き連れカナダのスケボーパークやライブハウスなどが存在しない田舎町にてショーを敢行。田舎町に住む若者達に音楽やスケートボードの魅力を伝えるために行われたこのツアーの内部に繰り広げられるドラマとツアーメンバーのその後を記録したドキュメンタリーとなっている。
この映像の概要からも分かる通り、スケボーと音楽の結びつきを考察する上で真っ先に挙がってくる音楽ジャンルは間違いなく「パンク」であると言える。西海岸にてその人気を確たるものへと高めていったスケートボードは、同様に西海岸にて強く若者に根付き愛された音楽ジャンルであるロックやパンクと結びつき両文化が相互に刺激し合っていたのである。
こういった西海岸全体(に始まり全米、ないしは北米大陸)を盛り上げたカルチャーはどうやらお隣国カナダにも少なからずの影響を与えていたようで、そうした影響が如実に表れでている好例が先ほどの”Hicks on Sticks”のドキュメンタリーであると言える。
広大な土地を利用した独自のライブハウス
あるいは閉鎖的と言えるまでに白人文化間にて愛されているように思えるスケートボード。しかしながら果たして今2016年においてもヒップホップとスケートボードはその曖昧な距離を保ったままであるのだろうか?
そうした疑問に対する答えの一つがカナダ、モントリオールに存在した。
モントリオール市内にあるこの TRH-Bar(バーと名付けられているものの実態はクラブである)では何と驚くべきことにクラブ内にスケボーバンクが存在しており、スケボーキッズ達の自由奔放なトリックが行われる中、DJやバンドがプレイするという中々に類を見ない作りとなっている。
TRH Bar facebook page
https://www.facebook.com/TrhBar/
このバーでは当然ながらパンクバンドがプレイする日もあるがDJイベントがメインの日もあるなどある特定の音楽ジャンルにフォーカスすることなく若者が愛する文化を包括的に取り扱っているというイメージだ。
当初の文化の出発点に余計な縛りを課せられることなく、自由に若者が愛するものを組み合わせてそれを享受するといった時代が来ているのかもしれない。
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