辞書「Orangeでライムするのは不可能」エミネム「そんなことない」単語Orangeで踏んでいる彼のライム解説
ラッパーと辞書
はとても親密な関係にある。一流のラッパーで辞書を読み込んだという人は少なくはない。辞書は基本的にラッパーにとっては自分を成長させてくれる先生であると言っても過言ではないだろう。しかし辞書を日常的に読みつつも、様々な辞書などに記載されている「Orangeと韻を踏める単語はない」という旨に反論したラッパーがエミネムである。
エミネムの素晴らしさを語るときに最初に思いつくのはやはり彼の韻の踏み方であろう。言葉の発音/伸ばし方を自在に操り、次々に韻を踏んでいくことが彼の最大の強みだと感じる。こちらの研究によると、ボキャブラリーの数的には彼より上のラッパーはたくさんいると言われているが、エミネムは間違いなくトップレベルのラッパーである。そんな彼が「韻」について語っているインタビューを紹介したい。
➖ あなたは韻を踏む時に、言葉を「曲げる」と聞いたのですが
エミネム:そうだな。発音の仕方を変えるってだけだよ。例えば「Orangeという単語で韻を踏むのは不可能」って言う人がいるけど、俺ならOrangeで韻を踏める言葉を色々出すことができる。
➖ 例えばどんな言葉ですか?
エミネム:もしそのまま「Orange」を(オレンジ)という風に発音をしたら、韻を踏める言葉はないんだ。でも例えば発音を伸ばして「Oo-ringe(オーゥレィンジ)」のように発音をすると、「Four Inch」「Door Hinge(ドアヒンジ)」「Storage」「Porridge(おかゆ)」「George」とかと韻が踏めるんだ。(実際に彼がどのようにして発音を変えているかは上記動画にて聞いていただきたい)
言葉の発音がどのようにして成り立っているのかを「解体」すれば、どんな言葉でも固い韻を踏めるんだ。
彼はこのように「言葉を曲げる」ことにより、様々な言葉で韻を踏めるように「解体」をしているのだ。さらに彼は「常に韻について考えている」と語っている。成績が悪く、高校2年生を3回もやったエミネムであるが、「言葉」に関してはエキスパートなのである。
そんな「Orange」で韻を踏んだエミネムであるが、彼が実際に「Orange」の発音を「解体」し、韻を踏んでいる曲をいくつか紹介をしつつ、RapGeniusスタイルで色付きで韻の解体を解説したいと思う。
Role Model
I’m dumb enough to walk in a store and steal
So I’m dumb enough to ask for a date with Lauryn Hill
Some people only see that I’m white, ignorin’ skill
Cause I stand out like a green hat with a orange bill
Brain Damage
Then I got up and ran to the janitor’s storage booth
Kicked the door hinge loose
And ripped out the four inch screws
Grabbed some sharp objects, brooms and foreign tools
This is for every time you took my orange juice
(こちらは上記の動画で説明されている韻を実際に使用している)
Brainless
Take some inventory
In this gourde there’s a Ford engine, door hinge, syringe, an orange an extension cord and a ninja sword
Business
Set to blow college dorm rooms doors off the hinges
Oranges, peach, pears, plums, syringes
Vrinn, vrinn! Yeah, here I come
I’m inches away from you, dear, fear none
いかがだろうか?英語ラップをする一流ラッパーはこのように言葉を「解体」し、様々な韻を踏んでいるのだ。現代ではこのようなスタイルで韻を踏むラッパーは増えているが、「解体/伸ばし」スタイルを世に広めたのはもしかしたらエミネムなのかもしれない。
ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington)カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼、Playatunerの代表。FUJI ROCK 2015に出演したumber session tribeのMCとしても活動をしている。
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