スプリントがJay ZのTidalの33%を買収したことに関して。スプリントにどのようなメリットがあるのか?
Sprint × Tidal
先週、米携帯キャリアとして知られるスプリントが、Jay ZのTidalの33%を買収したとの報道で、「音楽 × IT」界隈がとても盛り上がっていた。スプリントと言えば、2013年にソフトバンクの小会社になったことが記憶に新しい。Tidalは今まで「ユーザー数をかさ増ししている」とのニュースであったり、「インディーズレーベルに売上を還元することに苦戦している」というニュースであったり、かなりビジネスとして前途多難だと報道されていた。
そのため、今回のスプリントによる33%の獲得は、完全にTidalのメリットばかりに注目されていると感じる。金銭的に困っているところ230億円ほどが入ってきたので、それはTidalにとってはもちろん勝ちであるであろう。しかしあまりスプリントにとってのメリットが他のヒップホップメディアには書かれていなかったので、少しTidalについて考えてみたいと思う。
10倍以上の評価額
まず今回の33%獲得によって明らかになったTidalの市場価値である。Jay Zが2015年にTidalを買収したときは、評価額はおよそ$56 million(65億円ほど)となっていたが、今回33%の割合で$200 million(230億円ほど)となっている。ということは今回の買収後、評価額は全体で$600 million(700億円ほど)の価値があるということになる。そう、Jay Zが買収してから評価額が10倍以上になっているのである。
さすがJay Z!ビジネスマン!と言いたくなるが、例えユーザー数を偽っていたとしても、客観的にみてこの評価額になったということは、スプリントがこれからやるべく提携にそれほどの期待が寄せられているのであろう。
スプリント V.S. 他携帯キャリア
スプリントはソフトバンクに買収されたことからわかるように、米携帯キャリアのなかでは競争に負けていたとされている。実際にシェアはほぼVerizon、AT&T、T-Mobileによって占拠されていると言っても過言ではない。そして日本でも大体の携帯キャリアが7GBの制限をかけているなか、アメリカでもキャリアはそのような制限をかけている。下の図を見ることにより、スプリントは「データ」に力を入れていることがわかる。
「無限データプラン」が一台$50で使用できるということをアピールしており、他のキャリアに比べて無限データが安いことがわかる。さらに現在無限データプランに加入すると、アマゾンプライムが無料で使用できるようになるが、このプラン事態が1月30日までの期間限定であることもわかる。
スプリントのプレスリリースによると、スプリントに加入をするとTidalが無料で使用できるようになると報道されている。恐らく上記の「無限データプラン+アマゾンプライム」が好評だったと予想できる。他キャリアのユーザーがデータプランに高い値段を払い、さらにSpotifyやApple Musicにも会費を払っているところ、スプリントは「格安のデータプラン+無料のTidal」というプランを提示することにより、ユーザーを一気に獲得をしようという戦略であろう。
この戦略を見ていると、ソフトバンクがボーダフォンを買収し、格安プランによって急激にユーザー数を伸ばしたときを思い出す(実際には2年ほど使用したら使用料が上がったわけだが)。もしかしたらスプリントはソフトバンク戦略に則って、ここから急激にシェアを伸ばしていくのかもしれない。「所有する音楽」と「毎日聞く音楽」の違いに気がついているからこそ、踏み切った買収だと感じる。もちろんSpotify、Apple、Amazonは買収できるレベルの企業ではないので、必然的に買収して提携するならばTidalが第一候補になるであろう。そう考えるとお互いにとってWin-Winだと感じる。私はビジネスの専門家ではないので、もしかしたら間違えているところもあるかもしれないが、いち音楽ファンとしてこのような戦略には魅力を感じるので、このような思惑だと信じたい。
このニュースに興味を持った方は、起業家としてのJay Zから学べることも読んでみてほしい。
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