J. Coleの「High For Hours」のリリックから大統領との関係とメッセージを考察

 

社会問題についてリリックで語ってきたJ. Cole

特に新作「4 Your Eyez Only」では貧困地域で起こる残酷な事実について、映画のようなドラマチックな内容で語っている。彼の最大の魅力はやはりストーリーを伝える「言葉の力」だろう。そんな彼が本日Soundcloudにてなんの前触れもなく新曲「High For Hours」を公開した。キング牧師の誕生日に公開されたこの曲は、またもや言葉に力強い意味が込められた曲となっている。

2ndヴァースでは彼がオバマ大統領を訪問した際のエピソードが語られている。

 

I had a convo with the president, I paid to go and see him
Feeling nervous, sitting in a room full of white folks
Thinking about the black man plight, think I might choke, nope

Raised my hand and asked a man a question
‘Does he see the struggles of his brother in oppression?
And if so, if you got all the power in the clout as the president
What’s keeping you from helping niggas out?’

俺は大統領と会話をしたんだ。
白人ばかりの部屋に座っていて緊張をしていた
手を挙げて彼に質問をしたんだ。
「黒人が抑圧されて苦労をしている問題についてどう思いますか?大統領というパワーと持っているあなたは何故手助けをしないんですか?」

 

ホワイトハウスに訪問をし、自ら手を挙げ質問したJ. Cole。J. Coleは去年ホワイトハウスに招待され、他のラッパーと違い一人だけ私服で行ったことが話題となっているが、これはそれより前のできごとだと感じる。「I paid to go and see him(わざわざ料金を支払い、訪問した)」と語っていることからJ. Coleがまだ駆け出しのころの話しだと予想ができる。そして大統領の返答に真摯さを感じたと語っている。

 

He looked me in my eyes and spoke and he was rather swift
He broke the issues down and showed me he was well aware
I got the vibe he was sincere and that the brother cared
But dawg you in the chair, what’s the hold up?
He said there’s things that I wanna fix
But you know this shit nigga politics
Don’t stop fighting and don’t stop believing
You can make the world better for your kids before you leave it

彼は俺の目を見ながら分かりやすく現状を説明してくれた。
彼が出す雰囲気は真摯であり、とても問題を気にかけていることが伝わってきた。
「でも大統領という立場にいるのに、何があなたを引き止めているのですか?」
彼は改善したいことがたくさんあるけど、政治はそう簡単に動いてくれないと語った。
戦うのをやめない、信じることをやめない、そうすれば
世を去る前に、子供たちのために世界を良くすることができるだろうと。

 

この大統領の力強い言葉が、J. Coleの力強いリリックによって世間に広まるのだ。「Change is Slow(変化は遅い)」と語る彼のリリックは、オバマ大統領の退任スピーチを彷彿とさせる。

“Change only happens when ordinary people get involved. After 8 years as your president I still believe that.”

「普通の人たちや一般人たちが参加したときにやっと「変化」というものが起こる。8年間あなたの大統領をやってきた今でも私はこれを信じている。」

J. Coleは退任するオバマ大統領へのトリビュートとしてこのリリックを吐いたのかもしれない。しかしその後のリリックではこう語っている。

「力」というものが人に及ぼす影響を見てみろ
「力」から来る汚職はいつも同じ問題へと誘う。
真の「革命」は自分のなかでしか起こらない

これは恐らく、世の中を良くしたいのであれば、「力」を持っている存在に変化を起こしてほしいと期待するのではなく、一人ひとりが自分のなかで「革命」を起こし、「変化」する必要ある

ということを伝えたいのではないかと感じてくる。4 Your Eyez Onlyに収録されているChangeのリリックとも共通するメッセージなのかもしれない。

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington)
カリフォルニア州オレンジカウンティー育ちのラッパー兼、Steezy, incの代表。FUJI ROCK 2015に出演したumber session tribeのMCとしても活動をしている。

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