ヒップホップを次の時代へと誘ったDr. Dreの2ndアルバム「2001」8つの制作秘話

Writer: 渡邉航光(Kaz Skellington)


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1999年11月16日にリリースされたDr. Dre(ドクター・ドレー)の2ndアルバム「2001」。ヒップホップの流れを一気に変えてしまったこの作品の誕生を記念して、8つの豆知識を書いていきたいと思う。

このアルバムがどのようにしてヒップホップの流れを変えたかというと、90sサウンドから2000年代サウンドに業界を誘ったのである。90sヒップホップ、いわゆる「ブームバップ」っぽいサウンドではなく、生音のピアノサウンドを取り入れた新しいウェストコーストヒップホップとなっている。その後のヒップホップはしばらくは「2001」を模倣したかのようなドラムサウンドであり、いかにこの作品が影響を与えたのかがわかる。このアルバムの誕生秘話を知ることにより、さらに楽しんでほしい。

 

 

元々タイトルは「Chronic: 2000」になる予定だった


ソロデビューアルバム「The Chronic」に続き、アルバム名は「Chronic: 2000」となる予定だったが、デスロウレコード時代にその名前が出ていたため、シュグ・ナイトが既に権利を持っていたのである。そのため、それの一つ上に行くという意味で2001と名付けられた。1999年の暮にリリースされたこの作品が2001という名前なのはそのため。

 

このアルバムはドレーにとってかなりのプレッシャーであった


このアルバムをリリースした際のNY Timesインタビューにてドレーはこう語っていた。

ここ数年、ストリートでは俺が今でも良い作品をプロデュースできるかどうか、という議論が行われていた。さまざまな雑誌や口コミでは、俺がもうヒット曲をプロデュースできない、とまで言われていた。それが自分にとって一番のモチベーションだった。これ以上何をやればいいんだ?今まで何枚のアルバムをプラチナムになるまで売ってきたんだ?OKこれが俺の新アルバムだ。これを聞いて何か言うことがあるか?

ドレーは1992年に自身の1stアルバムをリリースしてから1999年まで何もしていなかったわけではない。むしろスヌープドッグの最高傑作とされている1stアルバム「DoggyStyle」や2Pacの”California Love”をプロデュースしたり、自身のアルバム以外の功績も素晴らしかった。しかしデスロウレコードから独立してからは「Been There Done That」をリリースしたにも関わらず、今までの作品並の大ヒットにはならかなった。そのため、今までの功績にも関わらずに、雑誌などではドレーのプロデュース力を問う人たちが出てきたのである。このアルバムでドレーの完全復活となったのである。

 

アルバムのキーマンはScott Storch


このアルバムの裏で大きな役割を果たしたScott Storchというキーボーディスト/プロデューサーを知っているだろうか?スコットは元The Rootsのキーボーディストであり、あの名曲「You Got Me」などを作った通称”ピアノマン”である。「2001」に関してもドレープロデュースのアルバムであるが、ウワモノのフレーズに関してはスコットが作っているものが多い。あのピアノリフで有名な1stシングル「Still Dre」のメインリフもScott Storchの産物である。

 

 

制作はKey. Scott Storch、Ba. Mike Elizondoとともに行われた


コープロデュースしたScott Storchは当時の作業のプロセスをRollingstoneにてこう語っている。

ドレーはインスピレーションを欲していた。かなり壁に当たっていたようで、それを乗り越えるために常に俺とマイク(エリゾンド)と作業していたようなものだった。俺がキーボード、マイクがベース、ドレーがドラムマシーン。

 

参加ミュージシャンにはポケベルが渡された


当時のTime紙では「2001」の作業プロセスがこう書かれていた。

「2001」に参加していた楽器隊はポケベルが渡される。そしてドレーが作業したい気分の時にそれが鳴り、全員が集まる。ドレーがドラムマシーンを叩きビートを作る。その後楽器隊が自由にプレイし、ドレーが気に入ったフレーズがあるとそのパートだけ書き出してフレーズの改善をしていく。ドレーが指揮をするバンドのようだ。

 

1stシングル”Still Dre”はJay Zがリリックを書いている


これは少し有名な話しかも知れないが、あの大ヒット曲”Still Dre”のリリックはJay Zと共に書いたものだと公開されている。ドレーはラッパーというよりプロデューサーなので、リリックを他人に書かせることに抵抗がないようだ。1stアルバムの「The Chronic」ではスヌープやクラプトが書いている曲もあるが、「2001」でも同じくさまざまなラッパーが作詞で参加している。

 

“The Next Episode”のかの有名なビルドアップの元ネタ


絶対クラブで流れたらテンションが上がるであろう”The Next Episode”

この曲のイントロのビルドアップは

「2001」では90sのアルバムとしては全体的にサンプリングが少ないが、この曲に関してはドレーのサンプル力が輝いている。

 

2015年の時点で米国だけで780万枚売れている


説明する必要がないと思うが、このアルバムはモンスターヒットだ。初週のセールスが516,000枚となっており、1stアルバム「The Chronic」を超えるハイプとなった。

 

Dr. Dreの「2001」はヒップホップの流れを変えてしまったほどの作品である。90年代と2000年代の狭間にリリースされ、新時代の到来を伝えるかのようなサウンドが衝撃を与えたのである。ヒップホップの流れにおいてはドレーのプロデュース作品を順に追っていくと見えてくるものがあるのでこの記事もオススメする。Dr. Dreの30年以上のキャリアから見るヒップホップの流れ

ライター紹介:渡邉航光(Kaz Skellington):カリフォルニア州OC育ちのラッパー兼Playatunerの代表。umber session tribeのMCとしても活動をしている。

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