KNOWER来日スペシャルインタビュー【LA発超絶エレクトロ×ジャズファンク】
Interviewer: 渡邉航光
皆さんはこのKNOWER(ノアー)というバンドを知っているだろうか? ロサンゼルスで話題となり、今ではネットを通じて全世界にファンベースを広げているLouis Cole(ルイス・コール)とGenevieve Artadi(ジェネヴィェーヴ・アルターディ)からなるこの二人組。
ジャンルでは形容しがたいのだが、KNOWERをあえてジャンルで説明するとしたら「LA発の超絶エレクトロ×ジャズ×ファンク×ポップス」というなんとも欲張りなサウンドとなっている。
ルイスはドラムンベースからジャズまでマスターする凄腕ドラマーとして界隈では有名であるが、彼の作曲/アレンジ能力とマルチプレイヤーっぷりが評価され様々なアーティストとコラボをしている。近年KNOWERとしてSnarky Puppy(スナーキーパピー)やブレインフィーダー所属アーティストとコラボをしたり、デイヴィッド・ボウイの「Blackstar」にてベースを弾いたことで話題となったTim Lefebvre(ティム・ルフェーブル)をフィーチャリングしたり、今後さらなる飛躍を遂げるであろう。(追記:ルイスはThundercatの「Drunk」にて“Bus in the Streets”と“Jamel’s Space Ride”の作曲で参加している。)
会って遊んでみると超クールでファンキーでフランクなKNOWERだが、彼らの音楽に対する思いを語ってもらったので是非チェックしてほしい。
Interview: KNOWER (Louis Cole & Genevieve Artadi)
もっとファッキンクレイジーにしてくれ!
➖ 8/5のライブ、最高でした!来日してくれてありがとう!
ルイス・コール(以下Louis): 最高だったよ!日本に来ることができて感謝しているよ。
➖ まずはどのようにしてKNOWERが始まったか教えて下さい。
Louis: ジェネヴィェーヴと僕がLAでロビー・マーシャルのライブバンドに参加して、そこで仲良くなったんだ。そこで彼女の曲に参加してみないかと誘われて面白いことをやろうということになって。
ドラムとかベースを入れまくったんだけど、それが結構弱っちい音になってしまったから彼女に「もっとファッキンクレイジーにしてくれ」と頼まれたんだ。その時初めて僕は「なんだそんなフルパワーでやっていいのか!」って思ってそれ以来ずっと彼女とフルパワーでヘヴィでファンキーなことをやっているよ。
そんな感じだよねジェネヴィーヴ?なんか他にあったっけ?
ジェネヴィェーヴ(以下Genevieve): …Yeah!
Louis: … 意見をありがとう笑
➖ これが初めての来日ですよね?なんで日本にきてライブをやろうと思ったのですが?またYASEI COLLECTIVEとはどのようにして繋がったのでしょうか?
Louis: 日本は凄く面白い場所だと予想していたから本当に今までずっと日本に来たくて。やっと日本にこれてその予想が的中したと感じているよ。東京は今まで行った中で一番面白い街と言っても過言じゃないね。
Genevieve: そういえばどうやってマサ(YASEI COLLECTIVEの松下マサナオ氏)とは繋がったの?
Louis: 普通にビデオをYouTubeで見てカッコいいと思ったからメールで連絡したんだよ。
➖ ライブを見て凄くエネルギーに満ち溢れた「ショー」だと感じたのですが、そのエネルギーの源は何なのでしょうか?
Genevieve: やっぱり私たちが世に対して感じていることを表してくれる音楽ってなかなか無くて。だから私たちは自分たちが一番聞きたい感じの曲を作って、他の人たちには出せないエネルギーを出したいと思っている。
Louis: 僕たちは世の中にないって意味で自分たちの痒いところに手が届くような音楽を作っているんだよね。そういう意味で自分たちが好きな音楽を作っているだけかもね。だからこそ音楽に多大な時間、エネルギー、愛を注ぎ込むことを楽しめるんだと思う。
➖ KNOWERってどのような音楽に影響されているんですか?
Louis: 最近作っているものに関してはSkrillex(スクリレックス)が自分の音楽人生に多大な影響を与えているね。
それ以外だとマイケル・ジャクソン、ジェームス・ブラウン、マイルス・デイヴィス、トニー・ウィリアムス、トーキング・ヘッズ、ビートルズ、ステレオラボ、ラッシュ、ビーチ・ボーイズ、ハービー・ハンコック、ジェームス・チャンスとか…やっぱりジャズはかなり聞くよ。
後はリゲティ、モーツァルト、バッハみたいなクラシックもかなり影響受けていると思う。多すぎて全員の名前は言えないや。
人生は難解でクレイジーだからそういう音楽をつくりたい
➖ KNOWERの音楽ってクラブ/EDMシーンとかに入っててもおかしくないと思うんですけど、それとは裏腹に難解なリズムや展開やコード進行を組み込んでいるのは何故ですか? 普通だったら相反してもおかしくない「EDMっぽい」と「ジャズっぽい」要素をかっこ良く掛け合わせられるのは何ででしょうか?
Louis: おーありがとう。単純にやっぱり自分の好きなものから来てると思うんだよね。EDMとかのとても重いドロップとかもクールだったら好きだし、それと同時にエグいコードとかか得ることができる感覚も好きなんだ。
Genevieve: 私たちは欲張りなのよ(笑) 全部一緒に混ぜちゃいたい!
Louis: 先ほど言ったように自分たちの痒いところに手が届くような音楽を作ろうとしていて、その痒いところがその二つの要素なんだよね。
Genevieve: 私からすると全部混ぜないほうが違和感があるんだよね。人間って色々な側面があるのに音楽(特にマーケティングされた音楽)を作るとなると何故か皆一つのものに留まらないといけないって考えちゃうの。私は人間が一つの側面しかないとは絶対思わないし、私自身も色々な気持ちがあるし。
Louis: そうだよな。人生は難解でクレイジーだからこそそういう色々なレイヤーの気持ちと繋げてくれるような音楽が好きなんだ。そしてそういう音楽をつくりたい。
➖ 深いね。人生は難解でクレイジー
Louis: そうだね。それが鍵さ(笑)
Genevieve: そしてそれをお互いから引っ張りだそうとしてるの。
➖ KNOWERはとてもオリジナルで風刺がきいた歌詞が多いと思うのですが、誰が書いているのですか?
「Butts and tits and money, because I’m broke and ugly」(ケツと胸とお金。なんだって私は貧乏でブスだから)や「The government knows when you masturbate」 (政府はいつお前が自慰しているのかを把握しているぞ)とか
Louis: 「Butts Tits Money」は二人で書いたよ。あの曲は世の中のその三つ(ケツ、胸、お金)に対する執着心を見ていてクレイジーだなと思って書いたんだ。
Genevieve: 「The Govt. Knows」はルイスが書いたわ。政府は把握しているからね。
ルイス:大体の曲は一緒に書くね。
➖ どこからそのインスピレーションって湧いてくるのでしょうか?
Genevieve: 大体は日常会話から出てくる。人生についてとか社会についてどう思うとかを普段から二人で話しているから、その中から曲に合うテーマを決めるって感じかな。たまにドライブしている時とかに私が運転していて、隣でルイスが「なんでもいいからなんか変なことを言って」と言ってくることもあるわ。
➖ アニメーションも凄く独特で面白いですよね。あんな宇宙から来た巨大なペニスロケットがスフィンクスにぶち当たる映像って普通思い浮かばないですよ(笑)
Genevieve: (笑)
Louis: そうだね。僕たちのビデオとかライブでのVJは変でクールでエグいんだ。大体は曲が出来てから最初に思い浮かんだものをつくるよ。“Butts Tits Money”ではディックロケットと呼ばれる男性器ロケットを地球上に飛ばしたりしているね。あまり映像に関しては深く考えないでクールだと思ったことをやっているだけさ。
死に方を選べるとしたらクールでエキサイティングに死にたい
➖ 最新のアルバム「Life」の他の曲で意味を説明したい曲とかありますか?
Louis: 「Pizza」という曲は 人生の意味についてだよ。普段はとても良い曲が出来るまでは健康志向で体に良い物しか食べないんだけど、アルバムに入るぐらい良い曲が出来た時には物凄い量のピザを食べるんだ。そういう意味で「良いものをつくる」ということと「ピザを食べる」ということが同等の人生の意味なんだ。
Genevieve: 「Die Right Now」はもし私が今死なないといけなかったら、楽しくてエキサイティングに死にたいってコンセプトだね。寝たきりの状態で死ぬとかじゃなくて。
Louis: 例えば死に方を選ぶとしてもクールに死にたいね。隕石にあたったり宇宙事故だったり…それも充分怖いだろうけど。もしかしたら崖から落ちるのはエキサイティングかも知れないね。病院で死ぬよりはまだ崖から転落死のほうがいいかな。
Louis: 「Hanging On」(記事冒頭の曲)はクソみたいな仕事をしている人についてだったり。そういうやりたくない仕事をやらないといけないシチュエーションの人は多いだろうけど人生ってそんな仕事のためにあるわけじゃないと思うんだ。何かもっと良い社会のシステムを作れるといいね。
Overtimeは元々ジャネット・ジャクソンに提供した曲
Genevieve:「Being Real」は偽物にならないように、周りと合わせて同化するために自分を縮めないようにって曲。「Overtime」は元々ジャネット・ジャクソンに提供したんだけど、彼女が使わなかったので自分たちのアルバムに入れたわ。
アルバムの全体のコンセプトがハードにぶっ飛ぶ、リアルでいる、ビッグでいるって感じなの。そういう意味で「Life」
➖ LAの音楽シーンについて教えて下さい。どんな人たちと友達だったり一緒に音楽やったりしていますか?
Genevieve: 私たちは篭って家でレコーディングしていることが多いんだけど、最近ではジャズミュージシャンと仲良くしているかな。LA出身というより他の場所から演奏しにくる人が多いって意味ではLAは本当に色々な人が集まっている。皆が集まるところだね。
Louis: 僕の好きなミュージシャンは結構友たちが多くて、例えばSam Gendel(サム・ゲンデル)とか長い間友たちだよ。Tim Lefebvre(ティム・ルフェーブル)は大好きなベースプレイヤーなんだけど彼はLAに住んでいるから僕らはラッキーだね。
そしてやっぱりThundercat(サンダーキャット)はLA住んでいて僕も彼の音楽が大好きだよ。後はDennis Hamm(デニス・ハム)も最高のキーボードプレイヤーだね。他にも最高にイケてる音楽友たちがLAには多数いるよ。
多分僕らはシーンというシーンには属さないんだけど、周りには本当にクールな人たちがいるよ。音楽に対して同じようなマインドを持っている人たちにサポートしてもらっていると感じる。LAは本当に良い音楽が多くて、どのジャンルにおいても素晴らしいものが備わっているね。
➖ Snarky Puppy(スナーキーパピー)とのコラボはどのようにして実現したのですか?
Louis: スナーキーパピーのジャスティン・スタントンからある日Facebookのメッセージで「君たちの音楽クールだね」って来たんだ。そこから遊んだりして、彼が「Family Dinner」にてコラボする人を探している時に誘ってもらったんだ。
I Remember (feat. KNOWER & Jeff Coffin) – スナーキー・パピー
どのようにしたらマーケティングできるとか考えるのではなくて、自分が信じている音楽をやる
➖ 近い将来コラボしたいアーティストとかいますか?
Louis: Skrillex(スクリレックス)とコラボしたい!後は最近Thundercatと数曲書いたよ。後はLush(ラッシュ)のボーカルたちが好きだから何かやってみたいね。
Genevieve: 私はトム・ギル(Thom Gill)となんかやってみたい!
➖ どうやってYouTubeでのファンベースを作りましたか?
Louis: 僕らの友たちで「Pomplamoose」って人たちがいるんだけど彼らが手伝ってくれたんだよ。僕らがどうやってキャリアを進めるかわからなかった時に彼らに「YouTubeビデオ作ってみたら?」って言われたんだ。それで作ってみたら彼らがシェアしてくれて少し広まった。スタートした時はそれに助けられたね。ファンを増やしていくことに関してはやっぱり自分たちの信じていることを貫いているということかな。今後もずっと自分たちが信じる音楽を作っていくことが主になると願うよ。
Genevieve: 自分たちが信じているやりたい音楽をやればやるほど、惹きつけたいファンを惹きつけられていると思う。どのようにしたらマーケティングできるとか考えるのではなくて、自分が信じている音楽をやる。
Louis: そうだね。数で見ると僕らはそんなに大きくはないけど、僕らのファンは世界で一番クールだよ。僕らはラッキーなのか自分たちの信じることをやっているのもあって世界中で超クールな人たちと繋がることができている。
Genevieve: イエア!どこにいっても超クールな人たちと出会えるから最高だね!
➖ お二人とも親は音楽をやっているのですか?
Louis: そうだね。お父さんは医者なんだけどジャズピアノとトランペットをやっているよ。お母さんは数ヶ月ベースをやっていたよ。僕の部屋でセッションとかしてたよ。
Genevieve: えー!超クールだね。
Louis: 姉も歌が上手いしトランペットもやってるね。あとプロのシンフォニーミュージシャンの叔父と叔母が7人ぐらいいて家族で音楽をやっている人は昔から多いよ。
Genevieve: 私の親は2人ともロックミュージシャンで週末によくポップスライブをやっているわ。お母さんはボーカルでお父さんはギタリストで作曲もやっていて、私は小さい頃から2人を見て育ったわ。
➖ 自分が音楽をやるきっかけはやはり親だったのですか?
Genevieve: 従兄弟がバンドやっていて加入してくれって頼まれたのがきっかけかな。その時はめちゃくちゃ下手で自分が何やっているのかわけわからなかったの(笑)だから音大に行こうと思って。
Louis: 僕はお父さんがいつもクールな音楽をかけていたから小さい頃からずっと自分も音楽をやるんだろうなって思っていた。小さい頃は段ボールでバスーンを作ってくれたり、自分で輪ゴムでギター作ったり、いつも周りには音楽があったよ。
➖ 最近良く聞いている曲とかって何ですか?
最近はスプーキー・ルーベンの「These Days are Old」をめっちゃ聞いてる。
ダーツの旅に使用されている曲である
Genevieve: 後はルイスのソロの新曲を聞きまくってる!
Louis: 僕はこのEternal – 「Stay」のテディ・ライリーのリミックスを聞いているよ。
➖ 最後に何か告知とかがあれば!
Louis:ソロアルバムがもうすぐ出るから要チェック!最高のアルバムになるよ!
Genevieve:私のソロアルバムもね!
Louis:いや、俺のだけだよ(笑)
Genevieve:違う!私のもソロアルバムもくるよ〜!
Louis:どっちも最高のアルバムになるしとても頑張っているから出たら是非チェックしてほしい。後はKNOWERでヨーロッパとアメリカ東海岸ツアーが近日中にあるよ!生バンドセットでも結構演奏する機会があるよ。
日本には出来るだけ戻ってきたいと思う!また会おう!
➖ DOPE! お二人ともインタビューありがとうございました!
https://www.facebook.com/KNOWERmusic/
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