ビースティ・ボーイズの「Licensed to Ill」ラップ史上初ビルボード1位になったアルバム
Writer: 渡邉航光(Kaz Skellington)
11月15日(アメリカ時間)にリリースされたBeastie Boys(ビースティ・ボーイズ)のデビューアルバム「Licensed to Ill」。この作品が2016年11月15日をもって30歳となった。昨今は90sヒップホップに回帰するトレンドが業界内で見えるが、ここで86年にリリースされたこの作品に注目してみようと思う。
ラップアルバム史上初ビルボード1位となったアルバム
ヒップホップ/ラップというジャンルが誕生してからそう長くない。70年代にグランドマスター・フラッシュ、DJクール・ハーク、アフリカ・バンバータなどの先人たちが作り上げた「ヒップホップ」という概念。そこから少しづつブロック・パーティーなどで広まることはあったが、爆発的に売れるということは起こらなかった。80年代に入りRun DMC、パブリック・エネミー、LL Cool Jなどが出てきてメインストリームに広まることがになったが、その時代にヒップホップを大きく前進させたのがビースティ・ボーイズのアルバムであろう。
ヒップホップ業界にほぼ白人がいなかった時代に、彼らはどちらかと言うとロックなアプローチをすることにより、とんでもない売れ方をしたのである。元々ロック畑出身の彼らとリック・ルービンのプロデュースが完全にマッチしたのであろう。
現代ではヒップホップとロックは二つの別のジャンルとして扱われていたり、ミクスチャーという二つを混ぜた音楽としてレーベルされていたりするが、昔はヒップホップ側からするとそのような分別はなかった。今までの音楽的に「ブレイク」とされていた部分を繰り返して作ったものは全てヒップホップであった。このアルバムに関してはレッド・ツェッペリン、ブラック・サバス、The Clashをサンプルしており、かなりロック色が強かったのが特徴だ。また「No Sleep Till Brooklyn」ではスラッシュメタルバンド「スレイヤー」のケリー・キングがギターソロを弾いているのがポイントだ。当時リック・ルービンがどちらのグループもプロデュースしていたので実現したコラボとのこと。
MVではライブハウスのスタッフに「こんなレコード一枚でライブするなんて音楽じゃない」と言われ、グラム・ロックバンドに仮装して再度登場する場面から、そのような硬いジャンルの分け方に対して物申しているのがわかる。
ロックやヒップホップ、そのようなジャンル関係ない!と言いながらもヒップホップのビート感や韻を常に大切にしてきたビースティ・ボーイズの原点を祝い、メインストリームにヒップホップを前進させた彼らに感謝をしよう。そして2012に亡くなってしまったハスキーボイスのMCAにも感謝をしたい。
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